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環境への取組み(E)

気候変動

気候変動の考え方

経済活動のグローバル化や人口増加等の影響で、気候変動等の様々な環境問題が深刻化しています。2015年に国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」では、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2℃を十分に下回る水準に抑えること(2℃目標)、更に1.5℃に抑えることを目指すとの合意がなされました。また、2021年に日本政府は、2030年のGHG排出46%削減目標(2013年度比)を掲げ、更に50%削減への挑戦を宣言しました。
JPRは、気候変動がテナントやサプライチェーンの活動など、我々の事業に大きな影響を与えるものと認識しており、GHG排出量削減等に積極的に貢献する方針です。我々はマテリアリティに「気候変動への対応」を特定し、科学的根拠に基づく中長期目標として、「2030年GHG総排出量46.2%削減(2019年比)」及び「2050年ネットゼロ」を設定しています。

気候変動への対応

JPRは、保有するオフィスビル等におけるエネルギーの効率的な利用と、再生可能エネルギーの利用推進等により温室効果ガスを削減し、事業活動が気候変動に与える影響の軽減に努めます。また、省エネルギーに優れた不動産を運営することは、事業機会の創出、競争力の向上に繋がると考えており、その取組みを推進します。

GHG総排出量目標

TCFDへの賛同

TRIMは、金融安定理事会(FSB)によって設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言について2021年5月に賛同し、TCFDコンソーシアムの会員として活動しています。
TCFD提言の4つの項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に基づき、気候変動がもたらすリスクと機会の分析を行い、その取組みを積極的に開示しています。

Science Based Targetsイニシアティブ(SBTi)による認定取得

JPRは2030年及び2050年までのGHG排出量の削減目標を策定し、これらの目標が、パリ協定(世界の平均気温の上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合し、科学的根拠に基づくものであるとして、SBTiによる認定を2023年4月に取得しました。
SBTiは、CDP、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)が共同で運営する国際イニシアティブで、気候変動による世界の平均気温上昇を1.5℃に抑えるという目標に向け、企業に対し科学的根拠に基づく排出量削減目標の設定支援や認定を行っています。

ガバナンス

TRIMは、サステナビリティ規程に従いサステナビリティ委員会を設置しており、同社代表取締役社長を委員長として、原則として年4回開催しています。同委員会では、基本方針の審議や活動のモニタリング、推進体制構築等を実施しています。

戦略

JPRでは、気候変動によるリスクと機会を把握し、それが事業に与える影響を検討するために複数のシナリオ分析を実施しました。

シナリオ分析

リスクと機会の特定及び財務的影響の検証

シナリオ分析は、外部専門家の知見を活用しながら以下のリスクと機会を特定し、影響度を定量的に評価し担当部署と対応を推進しています。

(単位:百万円)

分類 リスク/
機会
項目 財務影響(営業収益ベース) 戦略
1.5℃/2℃ ~4℃
2030 2050 2030 2050







政策・
法規制
リスク 炭素税導入によるコストの増加 ▲305 ▲816 ▲262 ▲441 非化石証書の購入、再エネ調達の拡大、省エネ工事の推進、排出係数低下による削減
GHG排出量削減目標達成の対策コスト ▲52 ▲354 ▲26 ▲101
炭素税導入に伴う工事費用の増加 ▲136 ▲363 ▲116 ▲196 投資効率性の向上、工事計画の見直し
気候変動に伴う規制強化での建物管理委託費用の増加 ▲3 ▲5 0 0 PM・BMとの協働(業務の適正化)
環境認証取得に係る費用の増加 ▲8 ▲13 0 0 環境認証取得による物件競争力の強化
機会 GHG排出量削減目標達成に伴う炭素税コストの削減 +118 +816 +101 +441 非化石証書の購入、再エネ調達の拡大、省エネ工事の推進、排出係数低下による削減
市場 リスク 省エネ関連投資額の増加 ▲24 ▲23 0 0 設備ニーズの適正化、エネルギー使用量削減によるコスト削減
追加的な省エネ関連投資額の増加 ▲4 ▲3 0 0
エネルギー価格上昇によるオペレーションコストの増加 ▲102 ▲101 ▲49 (+38) エネルギー使用量の削減、水光熱費用の削減
グリーンビル対応の遅れによる稼働率の低下 ▲339 ▲508 0 0 環境認証取得率の向上、物件入替による環境性能の向上
グリーンビル対応の遅れによる賃料の減少 ▲76 ▲203 0 0
グリーンビル対応の遅れによる資金調達コストの増加 ▲56 ▲138 0 0 投資家・借入先とのコミュニケーション推進、ESG評価機関の格付向上
機会 省エネ工事によるエネルギーコストの削減 +43 +59 0 0 投資効率性の向上、工事計画の見直し
グリーンビル対応による稼働率の上昇 +339 +508 0 0 環境認証取得率の向上、物件入替による環境性能の向上
グリーンビル対応による賃料の増加 +76 +203 0 0
グリーンビル対応による資金調達コストの削減 +56 +138 0 0







急性 リスク 突発的な風水害等による修繕費用の増加 ▲9 ▲14 ▲9 ▲14 浸水対策設備の拡充、浸水対応訓練の実施
突発的な風水害等による賃料収入の減少 ▲6 ▲6 ▲13 ▲13 損害保険での対応拡充
機会 水害による損害を損害保険で補う +9 +14 +9 +14 浸水対策設備の拡充、浸水対応訓練の実施
損害保険による賃料収入減少の回避 +6 +6 +13 +13 損害保険での対応拡充
慢性 リスク 損害保険料の増加 ▲20 ▲30 ▲21 ▲32 保険コストの適正化、レジリエンスの強化(保険評価の向上)
慢性的な気温上昇による夏季のエネルギーコストの増加 ▲1 ▲6 ▲3 ▲20 設備改修によるエネルギー使用量削減、テナントとの協働(省エネ対策の推進)
機会 慢性的な気温上昇による冬季のエネルギーコストの減少 0 +4 +2 +14
  • 移行リスク:脱炭素社会への移行に伴って生じるリスク(炭素税・電力・エネルギー価格の予測分析)。参考シナリオ:IEA World Energy Outlook
  • 物理リスク:気候変動そのものによって生じる物理的なリスク(水害の発生等)。参考シナリオ:WWF Water Risk Factor

CRREMによる分析

CRREMの概要

CRREM(Carbon Risk Real Estate Monitor)は、パリ協定で掲げられた1.5℃、2℃目標に整合するGHG排出量の2050年までのパスウェイ(炭素削減経路)を算出し、個別不動産、ポートフォリオの移行リスクを可視化するツールを提供しています。分析対象とする保有物件のデータとパスウェイを比較することで、個別物件及びポートフォリオの座礁資産化の時期及び炭素コストを算定し、これらに対処するために必要な改修工事や再生可能エネルギー導入規模を把握することで、今後の施策検討への活用に期待できます。

A)現行の省エネルギー改修計画シナリオ

  • 現在予定している省エネルギー改修工事を反映したケース

B)再生可能エネルギー導入計画を反映したシナリオ

  • 更なる省エネルギー改修投資と再生可能エネルギー導入計画を反映したケース(注1)

CRREMによる分析結果

JPRは保有する物件(2021年12月現在)を対象に、CRREMのリスク評価ツール(v1.22、アジア太平洋版)及びCRREM Global Pathways v1.093を用いて、座礁資産化リスクの分析を行いました。(注2)なお、使用したツールは日本の実態にあわせて、一部パラメータ(系統電力の排出係数、炭素価格等)を調整したものです。
分析の結果、Aシナリオでは1.5℃パスウェイにおいて2033年頃に、2℃パスウェイにおいては2044年頃に各パスウェイを超過し、Bシナリオでは1.5℃パスウェイにおいて2043年頃にパスウェイを超過する結果となりました。今後は分析結果を基に、環境負荷の高い物件の改善施策や改修工事、資産入替等を含む施策を検討します。

  • Bシナリオは、CRREMの要件外であるオフサイト再エネの効果を物件のパフォーマンスに反映させています。
  • CRREMでは建物全体でのパフォーマンスに主眼が置かれており、持分割合にかかわらず、建物全体もしくは区分所有範囲全体での各種エネルギー消費量等をインプットしています。

低炭素に向けたロードマップ

JPRはGHG排出量削減に関する科学的根拠を踏まえ、「2030年GHG総排出量46.2%削減(2019年比)」と「2050年ネットゼロ」を設定しています。目標達成に向けて、排出量削減のための具体的施策の策定及び取組みを推進していきます。

GHG排出量削減計画

計画達成に向けた施策

JPRでは、エネルギー効率の高い設備への改修や運用方法改善などの環境・省エネルギー対策に取り組む一方、温室効果ガス排出数値の測定を実施し、GHG排出量削減を推進しています。

エネルギー調達の切換え

電力会社の見直し

定期的に現行のCO₂排出係数をモニタリングし、契約の見直しによってGHG排出量削減に取り組んでいます。なお、CO₂排出係数の数値で判断するだけではなく、その根拠、電源構成や係数オフセットの方法についても確認します。

再生可能エネルギーの導入

再生可能エネルギーとは、温室効果ガスを排出しない自然由来のエネルギー源のことで、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといったものがそれにあたります。調達コストの増加を踏まえながら再生可能エネルギー100%プラン契約の導入を進めています。

設備改修による取組み

高効率空調設備への更新

空調設備の消費電力量は建物全体に占める割合が高く、特に夏季高温時の電力需要は急激に増加します。我々は空調設備更新を計画的に実施しており、経済性・快適性の向上とGHG排出量削減に取り組んでいます。

LED照明への更新

専有部及び共用部の照明をLEDに順次切り替え、消費電力を削減しています。

人感センサー付照明機器への更新

人感センサーは、人と明るさに反応して必要な時だけ点灯するため、消し忘れによる消費電力削減に効果があります。JPRでは、トイレ、給湯室、階段室など共用部のリニューアルに合わせて人感センサーを設置し、不使用時の照明を消灯させ、消費電力削減に努めています。

運用改善による取組み

区分 対策事項 主な取組み
照明 空室不在時のこまめな消灯 点灯・消灯基準を作成し、空室・不在時の消灯を促進
共用部照明のフロア管理 共用部照明を、テナントの利用時間に応じて管理
空調設備 冷暖房温度を推奨値に変更 冷暖房温度について、適正な設定温度をテナントに推奨
空室の空調機電源の遮断 空室部分の空調機の電源を遮断し、待機電力の消耗を防止
予熱・予冷時の外気導入停止 空調負荷の低減化を図るため、予熱時・予冷時の外気導入を制限
その他設備 契約電力の変更 契約電力低減のための制御機器の運転方法の見直しを行い、常時待機機器は適宜電源オフを実施
コンデンサーによる力率改善 コンデンサーのこまめな制御によって力率を改善し、電路・変圧器のエネルギー損失を減少
便座ヒーター温度の季節設定 トイレ洗浄便座のヒーター及び洗浄水温度を管理し、季節毎の設定温度を調整
外灯等の点灯時間季節別管理 屋外照明の自動点滅管理、季節に応じた点灯時間管理を実施

建物のレジリエンス対応

TRIMでは原則年1回、保有する全物件(底地を除く)について災害(台風・大雨・洪水・地震等)によるハード面の装備等を現地確認し、新たなリスクの有無等をチェックし、不動産の毀損・滅失及び劣化のリスクの回避に努めています。
また、保有物件が所在するエリアについて、定期的にハザードマップの更新状況を確認するなど、災害予測を活用したレジリエンス対応を進めています。

リスク管理

リスク管理

気候変動リスクについては、運用及び管理に係るリスクと統合し、複数の検証システムを通じてモニタリングし管理しています。TRIMではリスク管理規定に基づき、その実効性を高めるためにリスク管理委員会を設置しており、リスクの洗い出し・評価対応・モニタリング・改善の施策等について審議しています。同委員会における審議の内容、経過並びに結果については取締役会に報告されます。
また、サステナビリティ委員会では、サステナビリティ事務局により作成したリスクモニタリングシートを用いて確認しています。

リスク管理プロセス

TRIMでは、気候変動リスクを含めたリスク全般について年に2回モニタリングを実施し、リスク管理委員会において審議しています。また、年間の取組み状況を総括した上で、次年度計画を年末に策定し、TRIM取締役会に報告しています。

指標と目標

GHG排出量削減目標

JPRは、2050年ネットゼロ目標に向けた新たなGHG排出量削減目標を策定し、これらの目標が、パリ協定が求める水準と整合し科学的根拠に基づくものであるとして、SBTiによる認定を取得しました。
なお、JPRでは2030年までにScope3を含めたGHG総排出量46.2%削減(2019年比)という、より対象範囲を拡大した目標を設定しております。

目標 基準年 目標年 対象のGHG GHG排出量削減目標
中間目標 2019年 2030年 Scope 1+2+3 46.2%削減
長期目標 2019年 2050年 Scope 1+2+3 ネットゼロ

環境データ(集計期間:1月~12月)

報告数値の信頼性を確保するため、環境データの一部についてLRQAによる第三者保証を受けています。
対象となるデータの種類及び数値には*マークを付しています。

項目・単位 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
電気使用量* 総量(MWh) 92,952 89,317 92,071 96,087 94,107
原単位(MWh/㎡) 0.143 0.132 0.136 0.144 0.138
ガス等の使用量*(注1) 総量(MWh) 17,170 16,352 15,853 17,142 16,751
原単位(MWh/㎡) 0.026 0.024 0.023 0.026 0.025
熱使用量* 総量(MWh) 12,681 14,043 14,182 14,925 16,111
原単位(MWh/㎡) 0.019 0.021 0.021 0.022 0.024
エネルギー使用量* 総量(MWh) 122,803 119,712 122,106 128,154 126,969
原単位(MWh/㎡) 0.188 0.176 0.180 0.192 0.186
水使用量* 総量(㎡) 524,170 444,263 422,704 480,162 504,819
原単位(㎡/㎡) 0.804 0.654 0.624 0.720 0.740
Scope1* 総量(t-CO2) 1,331 1,293 1,212 1,233 1,440
原単位(t-CO2/㎡) 0.0020 0.0019 0.0018 0.0018 0.0021
Scppe2*
(マーケットベース)
総量(t-CO2) 15,283 14,929 14,419 12,224 10,592
原単位(t-CO2/㎡) 0.0235 0.0220 0.0213 0.0180 0.0155
Scppe2*
(ロケーションベース)
総量(t-CO2) 14,345 13,828 13,714 13,626 13,750
原単位(t-CO2/㎡) 0.0220 0.0204 0.0202 0.0201 0.0201
Scope1+2*
(マーケットベース)
総量(t-CO2) 16,614 16,222 15,631 13,457 12,032
原単位(t-CO2/㎡) 0.0255 0.0239 0.0231 0.0199 0.0176
Scope1+2*
(ロケーションベース)
総量(t-CO2) 15,676 15,121 14,926 14,859 15,190
原単位(t-CO2/㎡) 0.0241 0.0223 0.0220 0.0219 0.0223
Scope3* 58,317 54,347 53,331 47,631 43,662
カテゴリー1* (t-CO2e) 5,906 5,857 5,729 5,946 6,146
カテゴリー2* (t-CO2e) 9,942 10,383 10,158 9,861 11,901
カテゴリー3* (t-CO2e) 3,098 3,279 3,245 3,267 2,872
カテゴリー4* (t-CO2e) N/A N/A N/A N/A N/A
カテゴリー5*(注2) (t-CO2e) 2,894 2,001 1,979 1,968 2,360
カテゴリー6* (t-CO2e) N/A N/A N/A N/A N/A
カテゴリー7* (t-CO2e) N/A N/A N/A N/A N/A
カテゴリー8* (t-CO2e) N/A N/A N/A N/A N/A
カテゴリー9* (t-CO2e) N/A N/A N/A N/A N/A
カテゴリー10* (t-CO2e) N/A N/A N/A N/A N/A
カテゴリー11* (t-CO2e) N/A N/A N/A N/A N/A
カテゴリー12* (t-CO2e) N/A N/A N/A N/A N/A
カテゴリー13* (t-CO2e) 36,477 32,827 32,220 26,589 20,383
カテゴリー14* (t-CO2e) N/A N/A N/A N/A N/A
カテゴリー15* (t-CO2e) N/A N/A N/A N/A N/A
  • 各データは、JPRが把握できる範囲の数値を記載しています。
  • エネルギー使用量とスコープ1排出量については、非常用発電機燃料由来のものについては対象外です。
  • 各原単位は、JPRの保有持分相当の延床面積に、各年毎の平均稼働率(賃貸面積/賃貸可能面積)を乗じた面積により算出しています。
  • 2023年よりデータの収集範囲を拡大し、ガスのほかA重油と軽油が含まれます。
  • カテゴリー5の集計期間は4月~3月です。